イエス・ゴッホ・阿弥陀

9月18日から上野の都美術館で「ゴッホ展」が開催される。(~12月12日迄)友人の正田倫顕さん(ゴッホ研究者)が、いろいろな雑誌(下記に掲載あり)でゴッホの魅力を語られている。そのうちのひとつ、『時空旅人』のテーマは、「『イエス』と『太陽』」だ。このテーマ取りにも魅力を感じる。なぜゴッホは「イエス」を画題(人物像)として描かなかったのか。これも魅力のある謎だ。小生の属する宗教集団では、阿弥陀を「人物像」として具象化してきた。「イエス」は人物像として描かなかったが、我々は描いてきた。その差異も魅力のあるテーマだ。
今回のテーマは「ラザロの復活」を取り上げられて論じられている。レンブラントは「イエス」を大きく偉大に描いているが、ゴッホはその場所に太陽を描いている。この太陽が象徴するものは何か。それが単なる「イエス」の置き換えだと考えれば、それは陳腐だ。正田さんはそれを「事物を融合させる根源的エネルギー」と述べている。そしてこう述べる。「ラザロの死と再生はイエスの死と復活にもかさなり、両者は密接に結ばれるのではないか。そもそもイエスとは何の価値もない弱者に手を差し伸べ、迫ってくる存在であろう。そしてイエスと救われる者は境界を無化して、深く交わる。そこでは自と他、主と従、能動と受動の関係がなくなり、深い連続性の中で両者は溶け合う。」と語り、「根源的エネルギー」の動態をみごとに表現している。
牽強付会だが、この表現から〈真宗〉の信仰核心である「二種深信」を連想させられる。こうなってくると「イエス」も「ゴッホ」も、そして「阿弥陀」も横並びになって、唯一無二の私一人の眼前に迫ってくるようだ。
果たして、美術館でゴッホの作品を前にしたとき、私の中から何が引き出されてくるのだろうか。ワクワクするものを感じている。

◆「ゴッホの《ひまわり》――アルル編」(岩波書店『たねをまく』)
 https://tanemaki.iwanami.co.jp/categories/938
 図版の詳細はこちら↓
 https://tomoakishoda.wixsite.com/home/iwanami-tanewomaku
◆『時空旅人別冊 孤高の画家ゴッホ―クレラー=ミュラー美術館所蔵品でたどる』(三栄書房)
 https://amzn.to/2Y1e2ch
◆『美術の窓』2021年 10月号(生活の友社)
 https://amzn.to/3tCCzjA