福岡伸一さんが、コロナウイルスについて書いていた。ウイルスは高等生物が存在する以前にはいなかったと。つまり、我々が存在してから誕生したものらしい。人間に危害を加えるもの以外にも、無量無数に存在するのがウイルスだ。驚いたのは、敵であるウイルスが我々に感染するというよりも、宿主である我々のタンパク質がウイルスを迎え入れているのだそうだ。ちょうど家出していた子どもを親が受け入れるかのように優しく受け入れるのだという。これを読むまで、私はウイルスを、危害を加えるだけの害敵と思っていたが、そうではなかった。
では、なぜウイルスが存在しているのかと言えば、それは「進化」のためらしい。いままでの生態学的秩序を揺らし、壊し、新しい形態に改変するためらしい。ときにそれは病や死をもたらすが、それすらも「進化」のためだという。それにしてもコロナウイルスは、そこまでして何がしたいのか。その答えが見えない。
そう考えていたら、人間だって、そもそも何しにこの世に生まれてきたのか分からないではないかと聞こえた。決してコロナウイルスだけを責めるわけにはいかない。「俺に聞く前に、己自身に聞け」とコロナウイルスから反問されているのだ。